あけましておめでとうございます。
芋焼酎(お湯割り)を飲みながら、大学生時代、洋服を沢山買っていた頃のことを思い出しなんとなくセンチ(死語)な僕です。
昨年は全然更新しませんでしたが、本年はどうでしょう。まあ、長く続けるのは確かなので細々と。。
今回は日本のノンフィクション作家、石井光太の本を紹介します。
1月2日より鹿児島に帰省していたのですが、そこでやっとずっと読みかけだった「物乞う仏陀」を読了致しました。最初「感染宣告」を読んでからすでに1年半が経過しています。
石井光太さんはそれほど知名度は高くないかと思いますが、なかなかセンセーショナルな内容のドキュメントを書かれる作家さんだなと思います。
感染宣告
主に日本における、同性愛者のHIV感染に関するドキュメントです。
殆どの場合は男性なのですが、その場合、自分が同性愛者であることを隠すためにも結婚し子供までいる人もいて、それがHIVで明るみに出たりする、という部分がすごく印象に残っています。
(カモフラージュだけが目的ではなく、勿論友好な関係を気づいている場合も多いです)
この本で石井光太という作家を知ったのですが、非常に主観的かつリアリティのある文章で、なんとなく「いい作家さんだなあ」と思ったのを憶えています。
物乞う仏陀
アジア諸国における貧困層の生活に関するドキュメントです。
実際に作者が旅をし、インタビューをし、体験し、苦しんだ様子が書かれていて、読んでいると作者の目にした風景がありありと浮かんでくる気がします。
5歳までは物乞いのためにレンタルされ、その後手足を切断されるなど、ストリートチルドレンのあまりにも酷い人生を書いた部分が印象に残っています。
東南アジアからインド・ネパールまで、作者の広範な旅の記録も随所に記されており興味深いです。
神の棄てた裸体
性的なものへの抑圧の強いイスラム教圏における、性の実態に関するドキュメントです。
こういうこと言うと何だか俗っぽいですが、結局巨視的に見ると、人間と性は切り離せません。それは多分すごく大きなものに動かされており、どう折り合いをつけるかがすごく重要な問題だと思います。
多くの問題はそれぞれに関係し干渉しあっているため、問題の解決が難しいという場面は、我々の日常においても散見されますが、「〇〇って一体何なんだろう?」という非常に素朴で思考力を刺激する問にあふれた本だと思います。
と、今まで読んだ3冊の著作を紹介しましたが、他にも幾つかあるので、興味のある方はぜひお手に取られて下さい。
石井光太氏の著作の魅力は、「おそらく平均的な日本人が思うであろうこと」がとても主観的に、しかし共感できる形で描写されていることではないかなと思います。
著者は旅の途中でしばしば自己嫌悪に陥ったり、自分の無力さを呪ったり、時にはインタビュイーを傷つけたりもします。しかも同じような失敗を結構していると思います(笑)
しかし、やはり力のある文章というものは、体験と思考に基づき、共感できる部分と共感できない部分とを持っているものだと思います。
小難しいことを言ってここで話を小難しい方向へ持って行く事は、多分作者の本意では無いでしょうし、私の本意でもございません。
現在の自分への戒めも含めただただ思うことは、「自分に何ができるか」、「自分は何をしたいのか」ということへの、あくまでも「主体的な詰問」は失ってはいけないという事だと思います。
客観的に巨視的に、物事を判断することも大事ですが、明日からバッグひとつで出かけられるような人間になりたいなとも無い物ねだりのように思います。
(これは単純に、無鉄砲でありたいという意味ではありません)
あとがき
昔は買った本や着ない服などもコレクションとは言わないまでも保管していましたが、最近ではそれらのものはすぐに売るようにしています。
所有物が少ないということは、個人的にはとても尊い美点だからです。